
上描きされた風景 — Over-painted landscapes —
上出由紀:Yuki Kamide | 髙木優希:Yuuki Takagi | 高橋稜:Ryo Takahashi | 服部篤浩:Atsuhiro Hattori
Curation:Tomogi Arts 荻野智視
5月8日(水)〜 5月14日(火)
11:00〜19:00(最終日は17:00)
現実の風景に対する違和——まるで異界からの囁きへ耳を傾けるようにして——を挿入し、現実をベースに“上描き”したかのような印象の、詩的でポリフォニックな作品を生み出す作家たちの展覧会。

上出由紀|Yuki Kamide
携帯電話やスマートフォン、そしてSNSの浸透により、写真を撮ることはより日常的なものになった。多くの人がさりげない日常を、時にはちょっとした演出をしながらがらも、記録し続けている。その中には記憶から欠落していく風景もあるが、何度も反芻されて脳裏に焼き付いていく情景もある。この記録と記憶の差異に「自己」というものが見えてくるように思うのと同時に、その差異には「自己」と「他者」を超えた記憶になりうる場所が現れてくるようにも思う。
私の作品は、多重露光のように重ねられた写真の上に絵の具を重ねて作られている。 その過程の中で、写真に存在したはずの「いつ」や「どこ」といった特定性は失われ、人や鳥、花などのモチーフは強調され、記号化されるか、あるいは曖昧さの中に埋没していく。 作品に対峙している「いま」や「ここ」だけが立ち上ってくるような感覚が、自己の中へ、そして他者という外へと開かれていく。
そこに対話の場としての作品があるよう願っている。
プロフィール
1993
- 武蔵野美術大学大学院造形研究科油画コース修了(修了制作 優秀賞受賞)
1997
- ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ
- Certificate for Postgraduate Study in Fine Art 取得
- ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ Master of Art 研究生(秋学期のみ)
1994・1995
- 上野の森美術館大賞展 入選 2006
- シェル美術大賞展 入選
個展
1994,95,98
- 個展(フタバ画廊/東京)
2000(-2011)
- 個展(ギャラリーなつか/東京)
2005
- 個展(画廊 編/大阪)
2009,13
- 個展(SAN-AI GALLERY +contemporary art/東京)
2012(-2018)
- 個展(櫻木画廊/東京)
2018
- 個展(ギャラリー鬼無里/長野)

高橋稜|Ryo Takahashi
異なる画像を組み合わせた非現実的な画像を元に描く。私自身が非現実的な画像を画面に表現することで、画像では視覚することができない空間をモノクロームの意識で画面に定着し、絵画へ と表現する意識へと変えた。写真では画像に加えた線や抽象的な情報を写真として出力することで、1枚の虚構の画面にしている。非現実的な虚構の画面を作り上げる試みをしています。
プロフィール
1994年
- 北海道生まれ
2019年
- 東京造形大学美術学科絵画専攻 卒業
グループ展
2016年 | 2018年 | 2019年
- “CUBE “ TURNER GALLERY 東京
- “Change” 東京造形大学 CS gallery 東京
- “gimmick overlap” TURNER GALLERY 東京
- “ZOKEI展” 東京造形大学 東京
- “Change” Alt Medium 東京
- “東京五美術大学連合 卒業・修了制作展” 国立新美術館 東京


高木優希|Yuuki Takagi
ふとしたとき、視界の端に何かがいるような感覚に陥り驚くことがあります。
それはよく見るとコンビニの袋で時には道路標識だったりしますが、そのことに気付くまでの数秒間、私の意識はその謎のいきものにとらわれてしまいます。
“彼ら“と対峙した瞬間に体は硬直し、見慣れたはずの空間はまるでお化け屋敷かホラー映画のワンシーンかのように感じられますが、
その感覚は他人に共有されることはなく、自分の意識下ですら「コンビニの袋」だと理解した瞬間にユニークな思い出と姿を変えてしまいます。
そのような現実空間に潜む瞬間的な異空間のおもしろさを絵画上で再現しています。
プロフィール
1994
- 福島県福島市生まれ
2017
- 東京藝術大学入学(在学中)
2018
- 「ゆがいたかいがおいしい?」(gallery i)

服部篤浩|Atsuhiro Hattori
今回出品させていただいた作品は、私の生まれ故郷の北海道や現在の活動拠点である横浜や東京の光景を素材としており、私に身近な場所をスナップ撮影し、それを題材に描いたものです。まず、撮影という身体的行為の中で出会い、切り取られるものがあります。そしてそれを更に描きます。この過程で発生する(欠損させると同時に付随させる)ものが画面に登場する色面塊であるメディウム、または「M」。と私は呼んでいます。Mは描かれたイメージとの浮動的な関係として画面に登場しています。
いつも写真機は私のイメージを超えた外界の瞬間をありのまま切り取ります。私はそれらの切り取られた瞬間を描き、現実世界の有り様を、定義できない現実そのものとして絵画にすることに関心があります。
プロフィール
1975
- 北海道浦河町生まれ
2001
- 多摩美術大学二部絵画学科4年生による 「ART38」グランプリ(ヨコハマギャラリー)
- (財)守谷育英会 (守谷賞)
2002
- (財)佐藤国際文化育英財団 第12期奨学生
- 個展(ギャラリー壱零參堂 鎌倉)、個展(さいとうギャラリー 札幌)
2004
- 多摩美術大学 大学院美術研究科 絵画専攻 修了
2005
- 第41回 昭和会展招待出品
2010
- 個展(ギャラリーオカベ 銀座)
2012
- 個展(galleria grafica bis 銀座)
2013
- 個展「ある5人をめぐる旅 服部篤浩展」(羽村市生涯学習センターゆとろぎ)
2014
- 個展「ある人々の心をめぐる旅 服部篤浩展」(札幌市民ギャラリー)
2016
- 個展「服部篤浩展 -介入する絵画-」(ギャラリーオカベ 銀座)
- 第29回 全国絵画公募展IZUBI (優秀賞)
- 第18回 雪梁舎フィレンツェ賞展 (入選)
2018
- 個展「服部篤浩展 -定義できない現実-」(ギャラリーオカベ 銀座)