
野澤梓|Azusa Nozawa
個展「また明日話ができたら、」
December 13 – December 25,2022
11:00am~7:00pm(Last day ~5:00pm)
野澤梓は2019年に東京藝術大学絵画科油画専攻卒業した新進気鋭の⼈気アーティストです。
複数のレイヤーとイメージを多⽤した個性的でkawaiiが詰まった作品はとても愛らしく、そこには幼少からの記憶を辿って、画布に絵筆を動かす祈りにも似た行為が再現されています。
野澤が描く少⼥の輪郭は多くが⽩い線で描かれていて、それ以外の線は⿊・クレー、またはブルー、ピンクなどのパステルカラーで縁取られています。⼿描きであることを強調するかのように、不安定な軌跡で少⼥の輪郭をなぞった作品は、シールや落書きしたプリクラを大切なシール帳へ貼り、さらに⼿描きでデコレーションを重ねるという00世代を中⼼に多くの世代に懐かしいカルチャーを連想させます。野澤はこの行為をストリート文化におけるステッカーボムから引用してシールボムと称し、ノスタルジックでセンチメンタルなイメージを内包する独特な趣を重ねて唯⼀無⼆の作品に仕上げています。
野澤梓が描く全ての少女達は彼女のイマジネーションによって時間軸を超えて、独自のストーリーを語り始めます。かわいさの中で繰り広げされる錯乱に惑わされることをお楽しみいただけますと幸いです。

野澤梓|Nozawa Azusa
野澤梓はパステルのスペクトラムのなかで微睡む少女を幾重にも描き綴る。そこにはアーティストが幼少からの記憶を辿って、画布に絵筆を動かす祈りも似た行為が再現されている。
野澤の少女の姿は、聖ヴェロニカが手にする聖顔布にあるキリストの顔を思い起こさせる。全人類の罪を贖うため十字架を背負ってゴルゴダの丘を登ったキリストを見送った聖女ヴェロニカ。ヴェロニカはキリストの汗を拭うように、一枚の白い布にキリストの顔を写し取った。その布には、キリストの苦難の物語とヴェロニカがキリストを慕う気持ちが転写され、今なお聖顔布として生き続ける。
同様に野澤が描く少女には、幼い頃からの掘り起こされた自己の姿が現れ、少女から大人への物語が記憶として閉じ込められている。さらにその記憶を戸惑いながら愛おしむ画家の思いが溢れ出る。その少女は、白い光の粒で満たされたペパーミントやピンクの瞳を持ち、光の風に髪をたなびかせ、私たちを魅了する。また画面に刻まれた純白のきっぱりとした線は、野澤に特徴的なマスキングの技法によるもので、煌めく空間を隔てながらその重層性を強調し、さらなる物語の展開を予感させる。物語の主人公である少女は時には複数の顔を持ち、少女の揺れ動く感性が表現され、画家の記憶へと昇華されていく。
美術史ではキリストの肖像を繰り返し描くことに、ヴェロニカの聖顔布に続く宗教性が語られてきたのだが、現代では、自己が小宇宙を作り出し個人史に向き合う時代において、野澤が幾層にも自己を重ねた少女像を一貫して描くことに、新たな祈りの形を見出せるのではないだろうか。
プロフィール
1994年、静岡県出身。
2019年に東京藝術大学絵画科油画専攻を卒業。
主な個展として「揺られる彼女は」(銀座蔦屋書店/東京/2022)、「ふれてほとぼり」 (MEDEL GALLERY SHU/東京/2021)、「× と Ч の は く ち ゅ ~ む」(hidarizingaro/東京/2018)など。
また主なグループ展として「BLOOM」(Maison Ozmen/Paris/2022)、「199X9」( shuuue/東京/2021)、「ほころびと残像」(MEDEL GALLERY SHU/東京/2020)など。
2020-22年度のART TAIPEIにも参加した(MEDEL GALLERY SHUブース)。
2023年は3月にアートフェアArt Central(香港)、個展Maison Ozmen(Paris)と春から多忙なシーズンを迎える。