美波

きゃらあい | Kyaraai

さめほし | Samehoshi
東 麻奈美 | Manami Higashi

野澤梓 | Azusa Nozawa

 宏美 | Hiromi

GROUP EXHIBITION
キャラクターの絵画

 

December 6 –  25, 2024
1:00pm – 7:00pm(Last day until 5:00pm)

MEDEL GALLERY SHUでは、12月6日より25日まで、きゃらあい、さめほし、東麻奈美、野澤梓,
宏美、によるグループ展「キャラクターの絵画」を開催いたします。
本展では、漫画、アニメ、ゲームグラフィック等を通じて進化を遂げているキャラクター絵画に焦点を当て、各アーティストの独自の視点を紹介します。デジタルネイティブ世代である彼らは、アニメやゲームのキャラクターに自身のアイデンティティを投影しているのみならず、この表現は彼らにとってとても身近で自然なものなのだとも言います。イラストレーションとアートの境界をまたぎ絵画の同時代性の表現を試みています。作家たちの作品を通じて、新たな視点を共有し、皆様と共にその可能性を探求できれば幸いです。

 

キャラクターをモチーフにした絵画は近年、アートマーケットで注目を集め、イラストレーターなども参入するようになり「キャラクター絵画」と呼ばれるようになった。
キャラクターというモチーフが絵画のひとつの画風として受け入れられていく中で、「キャラクター絵画」イコール「可愛い絵」として扱われることが多く、作品の本質に触れる展示はまだ多くない。本展示では、きゃらあい、さめほし、東 麻奈美、野澤梓、宏美の5名は、キャラクターを用いた作風で絵画を制作している。この5人を元に、キャラクター絵画の中にある思想に触れたいと思う。

企画協力:宏美

MEDEL GALLERY SHU will feature a group exhibition “Character Paintings” from December 6 to December 25, featuring works by Kyaraai, Samehoshi, Manami Higashi, Azusa Nozawa, and Hiromi.

This exhibition focuses on character paintings, an art form that has evolved through manga, anime, and game graphics, showcasing the unique perspectives of each artist. Belonging to the digital-native generation, these artists not only project their identities onto anime and game characters but also see this form of expression as natural and familiar. Their work transcends the boundaries of illustration and art, exploring contemporaneity in painting. Through their creations, we hope to share new perspectives and explore the possibilities of this medium together with you.

In recent years, character-themed paintings have gained attention in the art market, with illustrators and other creators entering the field, leading to the emergence of what is now called “character paintings.” While this genre has increasingly been accepted as a legitimate painting style, it is often equated with “cute art,” with few exhibitions delving into the essence of the works themselves.

This exhibition features five artists—Kyaraai, Samehoshi, Manami Azuma, Azusa Nozawa, and Hiromi—who create paintings using character motifs. By examining the works of these five, we aim to uncover the philosophies embedded within character paintings.

きゃらあい | Kyaraai

大阪府出身
1996年生まれ
京都造形芸術大学アートプロデュース学科卒(現・京都芸術大学)

SNSで多様な価値観に触れられる時代、様々なものを吸収して、何が正しいのか、自分の意見や属性すらも分からなくなる浮遊感が自身の中に根強くあり、作品制作はそれを受け止める器にもなっています。

思春期のころから、「リアル」よりもインターネットでの人との繋がりが濃かった自分にとって、現在もSNSは切り離せない存在です。SNS上では楽しいこともあれば、見知らぬ人々の喧嘩や暴言、炎上などが常々起きては目の前に流れ付き、過剰に心を乱してきます。そんな日常生活で生じる心のゆらぎを捉え、善悪・明暗などで分けることのできない複雑な現代社会や人間関係を描こうとしています。

「いつかあったような日常」をベースに、幼い頃に親しんだ少女漫画のような大きな瞳の少女や、ファンシー雑貨のような色彩を用いて表現しています。また、絵自体が子どものおもちゃやノートに描いたお絵かきのようであることを大事にしています。例えばビーズのように、キラキラしているけどチープさもあり、いつか汚れたり壊れてしまいそうなものに美を感じます。

なぜそういったものに心が惹かれるのかと考えると、自身がインターネットに出会う前、リアルを一所懸命に生きていた時に身近にあったものが、SNSや日常生活で浮遊しつづける自分の心を留めてくれるような気がするからかもしれません。

さめほし | Samehoshi

1997 京都府生まれ
2020 武蔵野美術大学油絵科油絵専攻 卒業
アクリル絵の具とペンで崩壊と形成を繰り返す少女のような何かを描いている
また、書籍の装画やCDジャケット等にも多数作品を描き下ろしている。

私自身が、忘れたり忘れられたりする事
それが普通であるという概念が昔からとても恐ろしく、写真では残せないその時に感じた感情を線でリアルタイムで残したいと思ったのが、細い線を用いて絵を描く事になったきっかけのひとつであった。
また 10代の頃から、床に落ちたケーキ 溶けたアイス 割れたお皿、本来であれば残念な現象に魅力を感じ元々美しく可愛かった存在は例えその姿を保てなくなったとしても姿を変えて尚可愛いまでいられるのではないかと気づき
私の中で1番尊く、もう戻れないが故に執着している存在である少女でその表現を試みるようになった。
感じた事、思いついた事を、とにかく早く形に残したい私にとって、アクリル絵の具はとても相性が良く、今日まで取り返しのつかない変化をしていく一瞬を残す為にアクリル絵の具で崩壊と形成を繰り返す”少女のようなもの”を描いている。

東麻奈美 | Manami Higashi

「2次元」と呼ばれるキャラクターたちフィギュアという「3次元」の肉体を得ることで偶像的にも愛されるようになりました。
私はフィギュアに回転という動きを与え、その連続性を1枚のキャンバスに閉じ込める、
つまり「時間軸」=「4つ目の次元」を絵画という「2次元」 で可視化させる制作を行っております。
20世紀初頭、急速な工業機械文明の発展の中で動きや時間をキャンバスの中に表現してきた画家たちに想いを馳せ、私が今こうして現代的なキャラクターをモチーフに動きや時間を同じ油絵絵具を用いて描くこともまた、ループするような大きな時間の輪の回転を感じずにはいられません。
そのようにして物理的な回転、そして時間・次元を表す回転をキャラクターフィギュアに託しています。
野澤梓 Nozawa Azusa Profile

野澤梓 | Azusa Nozawa

野澤梓はパステルのスペクトラムのなかで微睡む少女を幾重にも描き綴る。そこにはアーティストが幼少からの記憶を辿って、画布に絵筆を動かす祈りも似た行為が再現されている。

野澤の少女の姿は、聖ヴェロニカが手にする聖顔布にあるキリストの顔を思い起こさせる。全人類の罪を贖うため十字架を背負ってゴルゴダの丘を登ったキリストを見送った聖女ヴェロニカ。ヴェロニカはキリストの汗を拭うように、一枚の白い布にキリストの顔を写し取った。その布には、キリストの苦難の物語とヴェロニカがキリストを慕う気持ちが転写され、今なお聖顔布として生き続ける。

同様に野澤が描く少女には、幼い頃からの掘り起こされた自己の姿が現れ、少女から大人への物語が記憶として閉じ込められている。さらにその記憶を戸惑いながら愛おしむ画家の思いが溢れ出る。その少女は、白い光の粒で満たされたペパーミントやピンクの瞳を持ち、光の風に髪をたなびかせ、私たちを魅了する。また画面に刻まれた純白のきっぱりとした線は、野澤に特徴的なマスキングの技法によるもので、煌めく空間を隔てながらその重層性を強調し、さらなる物語の展開を予感させる。物語の主人公である少女は時には複数の顔を持ち、少女の揺れ動く感性が表現され、画家の記憶へと昇華されていく。

美術史ではキリストの肖像を繰り返し描くことに、ヴェロニカの聖顔布に続く宗教性が語られてきたのだが、現代では、自己が小宇宙を作り出し個人史に向き合う時代において、野澤が幾層にも自己を重ねた少女像を一貫して描くことに、新たな祈りの形を見出せるのではないだろうか。

野澤梓 Nozawa Azusa Profile

宏美 | Hiromi

実在する風景にキャラクターの顔や植物が浮いたような絵を描く。
背景に描かれる風景は殆どが地元である岡山の災害地であり、キャラクターは人間が持つ理想の姿として描かれる。 キャラクターが顔のみ描かれるのは、キャラクターそのものに身体を必要としないからである。 キャラクターは一見人間のように見えるが「理想の姿」とは人間の姿を現しているだけでなく、「穏やかな生活」であったり、また「山」や「海」のような自然の具現化でもある。 コロナ禍の生活が始まってから、作品にはキャラクターの顔を覆うようにドットが描かれる。 SNSによるフェイク情報の拡散であったり、ウクライナでおきた戦争であったり、人間の行為がますます「理想の姿」から遠のいていることの現れを表現している。

1989年生まれ。 岡山県出身。
倉敷芸術科学大学 芸術学部卒。