
古家野雄紀
hologram
April 5 – April 17, 2022
11:00am~7:00pm(Last day ~5:00pm)
MEDEL GALLERY SHUでは4月5日〜5月17日まで日本画家の古家野雄紀の個展「hologram」を開催します。日本の美術を再定義し、再解釈し、そしてそれを現代のカルチャーとマージさせることでリプロダクトするという、文化の継承的な活動に重ね合わせた作品は、芸術史の王道にも通じ、また、その姿勢・作品が老舗企業とのコラボレーションとしても結実しています。つまり、古家野の日本画は時代を合わ鏡であるとも言えます。さらに、今年発表された「美人画シリーズ」さえも同様の解釈・手法を用いながら、新たに人間の生命又はDNAのあり方を示す意欲的な作品です。
特に若手アーティストのシーンに見られる特徴の一つに、自国のカルチャーを改めて見直し、再解釈し、そして自分自身の文化圏にある要素と織り交ぜて作品化するという傾向があるように思える。具体的な個人名の列挙は避けるけれど、たとえば江戸や室町時代の日本絵画、あるいは浮世絵や絵巻、陶芸や木彫、いやそれだけではなく妖怪など空想性や茶道の文化といった無形や有形に関わらず、日本的な文化を読み直す動きが、特に若手のペインターには多いような気がする。古家野雄紀もその代表例だと思うけれど、シリーズの一つ「群像図」は、本人も言うところではあるけれど、屏風絵をはじめとする日本の絵画構図、とりわけ俯瞰的な構図をアプロプリエイトしたものだし、少女をモチーフにしたシリーズは美人画を再考したものだと言う。モネやマティス、もしくはベーコンやドイグ、あるいはナビ派やニューペインティングでもなく、日本の絵画をレファレンスするという彼の姿勢は、現代美術の世界においてどんな意味を持つだろうか。
そうした姿勢は、2000年代以降、特に西欧で起きた動きを横目にしながら見ていくと一つの意味が生まれてくるようにも思える。それはつまり、アフリカ系アーティストの再評価をはじめとした美術史の再考であり、ポストコロニアルやナショナルヒストリーにまつわる一連の流れのことだ。「西欧以外にも美術の歴史はあるよね」という、当たり前といえば当たり前の観点に基づいた、今日の海の向こうの世界で行われているジェンダーや人種といった多様な美術の動き、要するに「白人の男性社会以外」のアートの流れを見直そうという動きである。そうした世界観では、シンプルな言い方をすれば、マティスっぽさベーコンっぽさではなく、あるいはコスースの言葉やバーゼリッツの方法論が引用されているかどうかではなく、むしろマティスもベーコンも知らなかった土着的な作家あるいは作品のコンテクストのホルダーであることの方がよりアドバンテージがあるだろう。
古家野の絵画は、そういう意味で、中央的な美術史にはインデックスがないストーリーを持っているとも言える。しかも彼は歴史からサンプリングしたデータをもとにしてつくり上げたコンテクストを、時代的なアイコンを引用するポップアートの手法を使いながら現代美術に翻訳する。トレーディングカードやアニメカルチャーの要素を取り入れ、自身の絵画に時代の写像として性格を加え、そうして彼は自分のコンテクストを無二なものへと強化していく。そしてそれは、あくまでも彼が歴史を主戦場にしていることの現れだろう。西欧を中心に展開され、無数の作家や作品、ムーブメントやコンテクストが横領跋扈している巨大で強大な美術の歴史を相手に、どのようにしてそこに自分を刻み込んでいくかという、一つの戦いでもあるのだろう。
奥岡新蔵
長らく百貨店を発表の中心にしてきた古家野ですが、今年はコマーシャルギャラリーでの新作発表を積極的に行なってまいります。日本の美術を現代カルチャーとマージさせた日本画の現代アート作品をご覧ください。

古家野雄紀|Yuki Koyano
江戸期をはじめとした日本の絵画、それから現代日本のサブカルチャーをスタディし、歴史としての日本文化を再考するペインティングを制作しています。「群像図」のシリーズでは、《洛中洛外図屏風》など日本の絵画技法をアプロプリエーションし、そこにラメによるホログラムをマッシュアップし、今日のカードゲームやシールといったホビーカルチャーと日本絵画をマッシュアップさせ、日本文化の再編集を試みています。「群像図」は生命をベースのテーマの一つに螺旋の形状を取り入れていますが、一方でその螺旋はDNAなど、種の存続という継承や持続のイメージを伴います。そのイメージを、私は自分の行っている、日本の美術を再定義し、再解釈し、そしてそれを現代のカルチャーとマージさせることでリプロダクトするという、文化の継承的な活動に重ね合わせています。
少女をモチーフにしたシリーズは日本画的な美人画をスタディすることで生まれました。ペン画によるドローイングをデジタルツールでパス化させた際、そこではノイズやバグのような、微妙なズレが発生します。私はそのバグを修正せず、そのままペインティングへと移りますが、そうしたバグ、つまり予想がつかない現象は、私たちが生きている時代そのものをイメージさせます。生物学の仮説に「赤の女王仮説」という、進化を止めた種から滅んでいくという学説がありますが、このシリーズではそうした経験したことがない状況に対応し、適応することを余儀なくされた人間という一つの生命あるいは螺旋のあり方を示しています。
プロフィール
1993 愛知県生まれ
「第6回トリエンナーレ豊橋」入選・審査員推奨三頭谷鷹史
2016 東京藝術大学美術学部絵画科日本画専攻卒業
2017 「豊島屋 鳩サブレー干支缶2017」豊島屋(′18、′19、′20、′21、′22)
「公益財団法人佐藤国際文化育英財団(佐藤美術館)第27期奨学生」
2018 「shinPA2018-対-」おぶせミュージアム・中島千波館
2019 「個展」仙台三越
東京藝術大学大学院修士課程デザイン科描画・装飾研究室修了 修了制作デザインN賞(中島千波賞) 受賞
「東武東上線川越特急・川越アートトレインラッピングデザイン」原画担当
2020「個展」渋谷東急
「デニーズグランドメニューブック」原画担当
2021「個展」高松三越
2022「個展」横浜そごう